けやき坂46「ひらがなけやき」歌詞の意味考察 ダブル・ミーニングを持つ歌詞


目次
イントロダクション
「私」の新しい生活
2層の意味を持つ歌詞
2番での展開
「ひらがな」の意味
結論・まとめ

イントロダクション

 「ひらがなけやき」は女性アイドルグループ、けやき坂46の楽曲。作詞は秋元康。

 2018年6月20日リリースの1stアルバム『走り出す瞬間』、2016年8月10日リリースの欅坂46の2ndシングル『世界には愛しかない』通常盤に収録されています。

 欅坂46の下部組織として設立された、けやき坂46。読み方は、正式に発表されているわけではありませんが、通常は「ひらがなけやき」。

 つまり、この曲はグループ名をタイトルにしているということです。前述のとおり、元々は欅坂46の下部組織としてスタートしたけやき坂46。

 グループ名を冠したこの曲は、そんなけやき坂46の状況とコンセプトをあらわした、メタ的な歌詞を持っています。

 具体的には、転校生が街に馴染んでいく過程と、けやき坂のメンバーがアイドル・グループとして馴染んでいく過程が、ダブル・ミーニングで語られます。

 本論ではこの曲の歌詞を考察し、けやき坂46の魅力を、少しでもお伝えできればと考えています。

「私」の新しい生活

 この曲の語り手は「私」。前述したとおり、この曲は「私」が、転校生として街に馴染んでいく過程を語っていきます。

 1番のAメロの歌詞を、以下に引用します。

きっと まだ誰も知らない
風の中を歩く私を…

 この時点では、まだ「私」が何者であるのか、どのような状況に置かれているのか、詳細は提示されません。「誰も知らない」という一節から、新しい環境であるということのみが示唆されます。

 より詳しい情報が、続くBメロで明らかになります。以下に引用します。

通学路に新しい制服
転校して来たの
秋が始まる頃…

 上記の引用部から、「私」が転校生であるという情報が明かされました。「制服」を着ているので、高校生あるいは中学生を想定しているのでしょう。

2層の意味を持つ歌詞

 ここまでは最低限の事実のみが記述され、「私」の心情は表れていません。しかしサビに入ると、少しずつ感情が綴られていきます。

 1番のサビの歌詞を、以下に引用します。

一本の欅から
色づいてくように
この街に少しずつ
馴染んで行けたらいい
舞い落ちる枯葉たち
季節を着替えて
昨日とは違う表情の
青空が生まれる

 引用部の前半4行は、この街に馴染んでいきたい「私」の感情。後半4行では、これからの変化を予感、あるいは期待する言葉が続きます。

 引用部をまとめると、転校生が新しい生活に慣れていけたらいいな、これから新しい生活が始まるんだな、という感情が綴られた内容。

 文字どおりの意味はそのとおりなのですが、前述したとおりこの曲の歌詞は、けやき坂46の状況を語る二面性を持っています。

 まず、引用部1行目で象徴的につかわれる「欅」の文字。言うまでもなく、欅坂46の下部組織である、けやき坂46としての活動を示唆しています。

 さらに、6行目の「着替えて」という表現。Bメロには「新しい制服」という言葉が出てきましたが、「制服」は所属や職業をあらわすシンボルとして機能します。

 そして、その後に続くサビに出てくる「季節を着替えて」という表現。通常は、季節に対して、着替えるという言葉は使いません。

 「着替えて」という表現は、季節の移り変わりを意味するのと同時に、けやき坂のメンバーたちが普通の少女から、アイドルへと変化することをも意味すると解釈できます。

2番での展開

 2番に入ると、引き続き二層性をともなって歌詞が進行。2番のAメロの歌詞を、以下に引用します。

少し みんなとは離れて
不安そうに歩く私に…

 上記の引用部は、転校生が周囲になじめない様子と、けやき坂のメンバーがアイドル活動にまだ慣れない様子が、ダブル・ミーニングになっています。

 その後に続くBメロの歌詞を、以下に引用します。

声を掛けてくれたクラスメイト
隣に並んだら
古い親友みたい

 上記Bメロは、Aメロとはコントラストをなし、一変して環境への対応が記述されます。しかも、3行目に「古い親友みたい」とあり、この環境が自分のいるべき場であると読み取れます。

 そして、サビには以下の言葉が続きます。2番のサビの歌詞を、以下に引用します。

街角の欅って
いつだってやさしい
通(かよ)ってたあの道も
同(おんな)じ風景で…
来年の若葉には
何を想うだろう
思い出がいくつも重なって
木漏れ日が生まれる

 1番では、変化をあらわすシンボルとして「欅」が用いられていました。それに対して上記2番では、同じく「欅」が出てきますが、担っている機能は異なります。

 3〜4行目に「通(かよ)ってたあの道も 同(おんな)じ風景で…」とあるように、ここでは転校してきた新しい街にある欅と、以前住んでいた街にある欅を比べ、その共通点を確認しています。

 つまり、1番では変化をあらわし、2番では変わらない部分をあらわしているということです。

 さらに5行目以降では、未来を想像する言葉が続きます。まとめると、1番では「欅」が変化をあらわすシンボルとして機能し、変わりゆく「私」の状況を記述。2番では「欅」が変わらない部分の象徴として機能し、未来の状況を想像する内容となっています。

 では、この差異はなにを意味するのか。環境は変わり続けるけど、自分の中には変わらない部分、変えてはいけない部分があることを、あらわしているのではないかと思います。

 また1番と2番では、時間が経過しています。1番は転校したばかりの時期。対して2番は、しばらく時間が経ち、新しい環境に慣れ始めた時期。そして時間の経過と共に、「私」の心情も変化しています。

 歌詞の中では、転校生が新しい環境に馴染んでいく過程が描かれています。ではこれを、けやき坂のメンバーにあてはめると、どのように読みとれるでしょう。

 アイドル活動に慣れつつも、「欅」の木が変わらないように、自分の目標や素直な気持ちを失ってはならない、というのが僕の仮説です。

「ひらがな」の意味

 上記の仮説につながる言葉が、2番のサビ後のCメロには綴られます。以下に引用します。

これからよろしく
ひらがなのように
素直な自分で
ありのまま…

 クールな印象の欅坂46に対して、よりカジュアルで親しみやすい印象のけやき坂46。彼女たちのコンセプトが、上記の引用部に凝縮されていると言っていいでしょう。すなわち、ひらがなのように素直なままでいるということ。

 『サイレントマジョリティー』でデビュー以来、コンセプチュアルな楽曲とイメージを作り上げてきた欅坂46。その下部組織としてスタートしたけやき坂46は、よりありのままのキャラクターを前面に打ち出すことで、差別化をはかっているということです。

 上記の引用部には、姉妹グループでありながら質の違いを生み出す、という運営方針と、「けやき坂46」のコンセプトが、端的にあらわれています。

結論・まとめ

 以上、「ひらがなけやき」の歌詞を、ダブル・ミーニングを意識しながら読みといてきました。

 転校生とアイドル活動。異なる新生活をダブル・ミーニングで描くこの曲は、一貫して新しい環境への不安と期待が綴られています。

 そして、曲のクライマックスと言うべきCメロで綴られるのが「ひらがなのように 素直な自分で」という、もっとも重要なメッセージ。

 転校生にとっては新生活への心がまえであり、けやき坂のメンバーにとってはグループのコンセプト。最後まで二面性を保ったまま、きれいに着地する歌詞です。

 僕は基本的にはスタダDDなんですけど、「ひらがな推し」を観ているうちに結構ハマってしまい、けやき坂のアンセム的なこの曲の歌詞を考察してみました。

 みんな素直で、本当に良いグループ。基本的には箱推しですけど、現時点では柿崎さん、渡邉さん、松田さんを特に応援してます。

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