スピッツ「スターゲイザー」歌詞考察 星を見つめる行為は何を意味するか?


目次
イントロダクション
イマジナティヴな言葉の連なり
「あの光」が意味するもの
独創性を増す歌詞
語り手と「君」の関係性
結論・まとめ

イントロダクション

 「スターゲイザー」は、2004年1月21日にリリースされた、スピッツの通算28作目のシングル。作詞作曲は草野正宗。

 タイトルの「スターゲイザー」とは、英語で綴れば「stargazer」。直訳すれば「星を見つめる人」という意味ですが、一般的には「天文学者」あるいは「夢想家」を意味します。

 語源を調べたわけではありませんが、「stargazer」という単語が持つ「夢想家」という意味は、おそらく空を見上げるロマンチックな行為が、夢見がちな想像をする人へと転じていったのでしょう。

 「スターゲイザー」というタイトルのとおり歌詞は、星を探すことと、未来を思うことが、互いにオーバーラップする内容。

 日常のありふれた事柄と、ロマンチックな想像力が、分離することなくあらわれています。日常から永遠へと飛び立つような想像力が、スピッツの歌詞の魅力だと思っているんですが、この曲はまさにスピッツ的イマジネーションに溢れた楽曲と言えます。

 このページでは「スターゲイザー」の歌詞を考察しながら、そのイマジネーションの豊かさをお伝えできれば、と思っております。

イマジナティヴな言葉の連なり

 最初に結論から述べましょう。この曲の魅力であり、特異な点は、想像力をかき立てる言葉が、連続しているところ。

 日常にありふれた感情が、語り手の想像力によって、宇宙規模のイメージへと広がっていきます。

 登場人物は、語り手と「君」の2人のみ。しかしながら「君」は言葉としては出てくるのですが、具体的な人物描写はなく、登場人物は語り手だけとも言えます。

 では、語り手がどのようにイマジネーションをかき立てる言葉を綴っていくのか、順番に確認していきましょう。

 1番のAメロ1連目の歌詞を、以下に引用します。

ひとりぼっちがせつない夜 星を探してる
明日 君がいなきゃ 困る 困る

 文字どおりに意味をとっていくのは、難しくありません。1行目は寂しい気持ちを、星を探す行為にこめ、2行目では「君」への想いを述べています。

 具体的には書かれていませんが、「君」がいないから語り手はひとりぼっちであり、せつない気持ちになっていると想像できます。

 その後に続く、Aメロ2連目の歌詞を引用します。

ゴミになりそうな夢ばかり 靴も汚れてる
明日 君がいなきゃ 困る 困る

 1行目の「ゴミになりそうな夢」とは、実現する可能性が低い夢という意味でしょう。そのあとの「靴も汚れてる」とは、どんな意味でしょうか。

 人生を、道に例えることがあります。上記の「靴も汚れてる」という表現も、実際に靴が汚れているという意味ではなく、人生において悪路を歩んでいる、言い換えれば、厳しい時期を過ごしている、程度の意味でしょう。

 1行目を意訳すると、かないそうもない夢ばかり追いかけてしまって、人生としてもなかなか厳しい道のりだ、ということ。

 そんな状態であるので、「君」に近くにいてほしい気持ちが、2行目の「君がいなきゃ 困る」に込められています。

 ここまでのAメロは、「星」「夢」「靴」などシンプルかつ抽象的でありながら、意味には広がりのある言葉を並べ、場面が想像しやすい表現となっています。

「あの光」が意味するもの

 さて、次にサビで出てくる「光」という言葉がなにを表象するのか検討します。1番のサビの歌詞を、以下に引用します。

遠く遠く果てしなく続く 道の上から
強い 思い あの光まで 届いてほしい

 2行目の「あの光」が、なにを指しているのか。Aメロ1連目の「星を探してる」という一節と、「スターゲイザー」というタイトルから想像するに、星が放つ光を指していると考えても良さそうです。

 しかし、単純にそうとも言い切れず、多様な解釈を許容するのが、スピッツの歌詞の魅力である特徴。この曲における「光」も、単純に星を意味するとも限らない、意味の広がりを持っています。

 冒頭で指摘したとおり「stargazer」には、星を見つめる人という意味から転じて、天文学者と夢想家という異なる意味を併せ持っています。

 タイトルが複数の意味を持つように、上記引用部の「あの光」も、二重の意味を持っているように思われます。

 例えば、星の光を意味するとして「あの光まで 届いてほしい」とは、なにを意味するのでしょうか。何万光年も離れた星まで届いてほしい、という文字どおりの意味だと、あまり意味が通りません。

 なぜなら、語り手の思いはそもそも物理的に存在するわけではなく、到達することはできないため。また、仮に存在したとして、遠くの星に到達しても、実質的なメリットがあるとは考えられません。

 つまり「あの光まで 届いてほしい」という一節には、文字どおりの意味だけでなく、それ以上の意味がこめられているということ。

 では、作者がこめた意味とはなにか、考えてみましょう。先述したとおり「stargazer」には「夢想家」の意味があります。

 この曲においても、夜空を眺めながらめぐらす語り手の思いは、夢想家の描く夢のように、実現可能性の低さをあらわしている、とも解釈できます。

 それでは、実現可能性の低い思いとはなにか。僕は「君」と「星」がイコールであるという仮説を立てます。つまり、語り手にとっての「君」は「星」と同じぐらい遠く、同時に輝きを放つ存在だという意味です。

 Aメロの「明日 君がいなきゃ 困る」という歌詞にも繋がってくるのですが、なんらかの理由で語り手は「君」に会うのが難しい状況なのだと想像できます。

 理由はなぜか。それはリスナーのイマジネーションに委ねられている、というのが僕の考えです。

 もしかしたら、「君」は星になってしまった存在なのかもしれないし、語り手の思いの強さを「星」という言葉に込めたのかもしれません。

独創性を増す歌詞

 2番に入ると、歌詞はより独創性を増していきます。1番よりも具体的な言葉が使われながら、そこから喚起される意味とイメージは、むしろ曖昧だという意味です。

 2番のAメロ1連目の歌詞を、以下に引用します。

すべてを嫌う幼さを 隠し持ったまま
正しく飾られた世界で 世界で

 1行目の「すべてを嫌う幼さ」とは、世間の常識すべてに批判的な、若いころ特有の態度をあらわしているのでしょう。現代的な言葉で言えば、厨二病的な態度と言ってもいいかもしれません。

 2行目の「正しく飾られた世界」とは、1行目からの繋がりを考慮すると、嘘や欺瞞もありつつ成り立っている世界をあらわしているのだと思います。

 すべてを嫌う幼さを持った語り手は、少しの嘘でも忌み嫌いそうなものですが、世界は多くの要素が重なりあい、複雑に成り立っていることは理解しているのでしょう。

 つづいて、2番のサビの歌詞を以下に引用します。

一度きりの魔球を投げ込む 熱の向こうへと
泣いて 笑って 泥にまみれた ドラマの後で

 「魔球」は何を意味するのか。言うまでもなく、いきなり野球の話題になっているわけではありません。ここで出てきた「魔球」も、なにかを比喩的にあらわしていると考えられます。

 会話をキャッチボールに例えることがありますが、ここでの「魔球」も、言葉のやりとりを意味しているのではないでしょうか。

 想定されるのは語り手と「君」の会話。「魔球」と言うほどに、滅多に言わないとっておきの言葉を放ったということです。

 ではどんなタイミングで、その魔球のような言葉を放ったのか。2行目で説明されています。

 「泣いて 笑って 泥にまみれた ドラマの後で」ということは、語り手と「君」が多くの期間をともに過ごしたあとで、魔球のような言葉をかけたということでしょう。

 以上のように、2番に入るとそれぞれの言葉がより広い意味を持つ、具体性よりも独創性が強い歌詞が展開します。

語り手と「君」の関係性

 語り手が一貫して語っていると思われる「君」。では次に、語り手と「君」がどのような関係であるのか、検討してみましょう。

 1番に出てきた「君がいなきゃ 困る」という一節。また、先ほどの「泣いて 笑って 泥にまみれた ドラマの後で」という言葉を考慮すると、2人は恋人同士だったと考えるのが普通でしょうか。

 2番のサビのあとには、Bメロあるいは大サビと呼ぶべきメロディーが続きます。当該部分の歌詞を、以下に引用します。

明かされていく秘密 何か終わり また始まり
ありふれた言葉が からだ中を巡って 翼になる

 上記引用部も抽象的かつイマジナティヴで、いくつもの解釈が可能。ひとつの仮説として、語り手と「君」が恋人同士、あるいはそれに近い親しい間柄であるという前提のもと、読みといてみましょう。

 まずは1行目。「明かされていく秘密」とは、お互いをより深く知っていくこと。その後に続く「何か終わり また始まり」は、お互いに様々な感情が芽生え、関係性が変わっていく過程をあらわしていると考えます。

 つづいて2行目。「ありふれた言葉」とは、「君」から投げかけられた言葉。それが「翼になる」とは、「君」の言葉が勇気や希望になったということでしょう。

 上記引用部をまとめると、語り手は「君」とのコミュニケーションをとおして、多くの感情を受けとり、その一部は未来へ向かうモチベーションになったということです。

 また、先ほど「君」と「星」がイコールであるという仮説を立てました。「ひとりぼっち」「君がいなきゃ 困る」といった言葉が散りばめられ、逆説的に「君」に会えない状態であることが示唆されます。

 これは何を意味しているのか。単純にお互い忙しく会えないだけなのかもしれないし、もう別れてしまったのかもしれない。あるいは「君」はすでに星になってしまった、すなわち亡くなっているのかもしれません。

 歌詞には確定的な記述はされませんが、多くの可能性を許容するところが、この曲の共感性の高さにつながっているのでしょう。

結論・まとめ

 以上「スターゲイザー」の歌詞を、英語の「stargazer」が持つ意味の広がりを意識しながら、読みといてきました。

 直訳すれば「星を見つめる人」を意味するスターゲイザー。そこから転じて、天文学者や夢想家を意味するのは、冒頭で確認しました。

 この曲の歌詞も、星を見つめるロマンチックな行為が「君」を思うことに重ねられ、複数の意味を伴ないながら展開。

 ほとんど具体的に人間関係やストーリーは語られないにも関わらず、リスナーそれぞれの想像力を刺激し、イメージを喚起させる歌詞になっています。

 個人的には「魔球」という言葉の使い方が、もっとも好きです。会話をキャッチボールに例えていると仮定して、トリッキーな素直じゃない言葉を意味しているのか、あるいは魔球のように滅多にない言葉という意味なのか、イマジネーションが広がります。

 いぜれにしても、聴く人それぞれに異なった姿を見せるのが、この曲およびスピッツの魅力であると思っています。

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