乃木坂46「キャラバンは眠らない」歌詞の意味考察 アイドルとキャラバンの共通項


目次
イントロダクション
そもそもキャラバンとは?
アイドルとキャラバンの共通点
夜を描く理由
フロンティアの意味
結論・まとめ

イントロダクション

 「キャラバンは眠らない」は、女性アイドル・グループ、乃木坂46の楽曲。2018年11月14日リリースの22ndシングル『帰り道は遠回りしたくなる』に収録されています。

 作詞は秋元康。センターを務める齋藤飛鳥さんをはじめ、若手を中心に編成されたメンバーによって歌唱される楽曲です。

 この曲が収録される『帰り道は遠回りしたくなる』は、乃木坂の1期生であり、長らくエース格として活躍した西野七瀬さんが参加する最後のシングル。

 同時期には西野さん以外に、若月佑美さん、能條愛未さん、川後陽菜さんと1期生が立て続けに卒業を発表。いやが応にも、乃木坂の転換期を感じさせるシングルとも言えます。

 そんなシングルのカップリングとして収録される「キャラバンは眠らない」。前述したとおり、齋藤飛鳥さんをセンターに据え、若手メンバーによる楽曲となっています。

 あたかも数年後の乃木坂を予見させるようなメンバー構成。そして、歌詞も未来へと進む内容となっています。

 ハッキリ言ってしまえば、若手メンバーへ向けられたとしか思えない歌詞です。では、どのようなことが歌われているのか、僕なりの解釈をご紹介したいと思います。

そもそもキャラバンとは?

 タイトルになっており、歌詞のなかにも何度も出てくる「キャラバン」という単語の意味を、最初に確認しておきましょう。

 キャラバンとは、ペルシャ語の「カールヴァーン」(Karvan)を語源に持つ言葉で、日本語では「隊商」という訳語があてられています。

 手元にある広辞苑に載っている「隊商」の意味を、以下に引用します。

砂漠のような鉄道の発達しない地方で、隊伍を組み、象・ラクダ・ラバなどの背に、商品などを積んで行く商人の一団

 上記の引用で、言葉の意味は確認できました。「キャラバンは眠らない」の歌詞も、上記キャラバンの意味をモチーフにしながら、綴られています。

 しかし、文字どおり荒野を行く商人たちを鼓舞する曲かといえば、そうではありません。表層的にはキャラバンをモチーフにはしていますが、歌詞が伝える意味はより広く、共通の目的を持つグループを描いた内容。

 言うまでもなく、この曲を歌う乃木坂の若手メンバーにも、あてはまる内容となっています。

 でも、共通の目的を持つグループを描くなら、例えばスポーツのチームや、劇団をモチーフにしても良かったはず。なぜ、モチーフとして「キャラバン」が選択されたのか。その理由を考えてみましょう。

 掘り下げて考えてみると、キャラバンを比喩に使うことで、多くの意味が帯びることに気がつきます。いくつか思いつく例をあげていきます。

 鉄道や道路がない場所を行くということは、レールのように決まった経路がなく、試行錯誤しながら進む必要があること。その道中で、未知なる危険に遭遇する可能性もあること。目的地に着くまで、メンバーは寝食を共にし、密接な関係になること等々。

 冒険とも呼ぶべき道程をたどるドラマ性と、多くの時間を一緒に過ごすことになる親密性が、もっとも顕著な特徴と言えるでしょう。

アイドルとキャラバンの共通点

 ここまでの考察をまとめると、この曲は表層ではキャラバン隊を歌いながら、比喩的に乃木坂の未来を歌っているということ。

 ではキャラバンが持つイメージを、アイドルグループに照らし合わせることで、どのような意味が生まれるのか。実際に歌詞を見ながら、検討します。

 1番のAメロの歌詞を、以下に引用します。

地平線で重なる
大地と空のように
どこまでも続く果てしない世界
道なき道 迷って 残された手がかりは
誰かが歩いたその足跡

 前半3行では、キャラバンが喚起するイメージどおりに、荒野を行く様子が描かれています。それに対して後半2行では、別のキャラバン隊の存在が示唆されています。

 では、上記引用部をアイドルグループに置き換えて解釈すると、どうなるか。前半3行は成功への道筋が不確かであること、後半2行はすでに卒業した先輩メンバーが、道筋を示してくれたことを表していると言えるでしょう。

 まとめると、成功への決まった経路は存在しないアイドルグループとしての活動。そんな不確かな状況において、先輩の活動がある程度の道しるべになっているということです。

 つづいて、1番のBメロの歌詞を、以下に引用します。

どんな夢を見たのか?
風は強く吹いたか?
太陽が沈んで暗い闇に絶望したか?

 こちらの引用部では、3つの文章すべてが疑問文になっています。また、1行目に「夢」、3行目に「暗い闇」と出てくるため、時間設定が夜であることも分かります。

 まずは、疑問形である理由を考えてみます。キャラバンのイメージに沿って解釈すると、荒野の旅路があまりにも過酷だから、あるいは当初の目標とモチベーションを思い出すため、語り手が自問自答しているように思われます。

 次に、アイドルグループに代入すると、どのような意味を帯びるのか検討します。

 1行目の「どんな夢を見たのか?」は、キャラバン的に解釈すると、文字どおり寝ているときにどんな夢を見たのか、という意味でしょう。

 しかし、アイドル的に解釈するなら、そもそもアイドルを目指すときに何を夢見ていたのか、という問いかけとも取れます。

 2行目と3行目も、キャラバン的解釈なら、そのまま言葉どおりに受け取ればいいでしょう。一方で、アイドル的解釈なら、楽しいことばかりではなく、時には過酷なアイドル生活に心が折れていないか、という自問のように響きます。

 道なき道をいく過酷なキャラバン。確実に成功するという保証はないアイドル。両者の置かれた、決まりきった経路はないという共通した状況が、ダブルミーニングで描かれた歌詞と言えます。

夜を描く理由

 何日にもわたって、道なき道をいくキャラバン。「キャラバンは眠らない」というタイトルが示唆するとおり、この曲では「夜」というワードが、くり返し使われています。

 先ほど引用した1番のBメロは、時間が夜に設定されていました。その後に続くサビでも、引き続き夜のまま。1番のサビの歌詞を、以下に引用します。

キャラバン星の夜は眠らない WOWOWOWO…
キャラバンそう微かな灯りでも…
そうさ
キャラバン先を急いで行こう! WOWOWOWO…
キャラバンそこに道が見えるなら…
信じる方角へ進むだけだ
前の世代を超えろ!

 引用部をまとめると、夜でも歩みを進めよう、という内容。最後の行が「前の世代を超えろ!」で締めくくられていますが、アイドル・グループに置き換えても、きわめて分かりやすい歌詞と言えます。

 前述のとおり、時間設定は夜。では、なぜ夜を描く必要があったのか、検討します。

 まず1行目。「キャラバン星の夜は眠らない」とあるとおり、夜でも歩みを止めない、という強い意志が示されています。

 さらに2行目。「そう微かな灯りでも…」と続き、いかに暗い夜でも、光がある限り進もうと、1行目の意志がくりかえし強調されています。

 本来のキャラバンは、天候の問題や、盗賊等を避ける目的がある場合を除き、わざわざ夜に歩みを進めはしないはず。そのため上記の引用部は、アイドル・グループの置かれた状況へと、変換して読みとくべきだと考えます。

 冒頭で紹介したとおり、乃木坂の若手メンバーによって歌唱されるこの曲。まだ選抜未経験のメンバーも含まれ、実際の選抜メンバーと比べれば、発展途上とも言えます。

 歌詞の世界観に照らし合わせると、この曲の構成メンバーにとっての夜明け、すなわち全盛期と言うべき時間は、未来にあるということ。つまり、時間を夜に設定することで、若手メンバーを鼓舞する意味を付加したとも解釈できます。

 ここまでキャラバンを比喩的に用いて、アイドル・グループの状況が描かれてきましたが、サビに至るとアイドルを思わせる表現が前景化。

 もはや、乃木坂の若手メンバーへのメッセージとしか、思えない内容となってきました。

フロンティアの意味

 2番に入っても、歌詞の構造は1番と変わりません。すなわち、キャラバン隊を思わせる描写に、アイドル・グループの活動が重なる内容となっています。

 2番のサビでは、1番での「キャラバン」に代わり「フロンティア」という言葉が登場。この言葉が何を意味するのか、検討しましょう。

 2番のサビの歌詞を、以下に引用します。

フロンティアその背中が遠くても WOWOWOWO…
フロンティアいつの日にか追いつこう
君は
フロンティア憧れて来たんだ WOWOWOWO…
フロンティアずっと夢の中にいた
このまま走っても間に合わない
違うルートを探せ!

 「フロンティア(frontier)」とは、辞書的には「最前線」「境界地帯」などを意味します。特にアメリカ合衆国では、西部開拓時代の最前線を指し、「未開の地」「新天地」といった意味も持つ言葉です。

 引用部に出てくる「フロンティア」。キャラバン隊的に解釈するなら、上記の意味のとおり、まだ見ぬ新天地という意味でしょう。

 では、アイドルに代入すると、どんな意味を帯びるか。具体的に乃木坂46に照らし合わせて、考えてみましょう。

 この曲がリリースされた2018年11月時点で、乃木坂は日本のトップ・アイドル・グループと言って、差し支えないでしょう。その人気を牽引するのは、シングルのリード曲を歌う選抜メンバーたち。

 「フロンティア」が意味するのは、乃木坂の人気を作り上げてきた、卒業したメンバーも含めた、これまでの選抜メンバーたちです。

 この曲を歌唱する一部の若手メンバーにとっては、過去の主力メンバーたちは、歌詞にあるとおり「憧れて来た」存在であるのでしょう。

 さらに上記引用部6行目では「このまま走っても間に合わない」、7行目には「違うルートを探せ」と綴られています。

 つまり、過去の主力メンバーは憧れの存在ではあるけど、模倣するだけでは、追いつき追い越すことはできないということ。

 これまでの乃木坂の成功をフロンティアに例え、現在の若手メンバーには、それをなぞるだけでなく、いずれは超えてほしい。そのような激励を込めた歌詞と言えるでしょう。

結論・まとめ

 以上「キャラバンは眠らない」が、乃木坂の若手メンバーに向けられた曲である、という仮説に基づいて、歌詞を読みといてきました。

 この曲では表層では荒野をいくキャラバン隊を描きながら、深層では乃木坂の若手メンバーを鼓舞する内容になっています。

 冒頭に書いたとおり、長年エースとして活躍した西野さんが卒業。

 人気の低下も危惧されるなかで、若手メンバーたちには、今まで以上に乃木坂を発展させ活躍してほしい、というメッセージが込められた曲と言えるのではないかと思います。

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