目次
・イントロダクション
・歌詞の世界観
・アイドルの命は如何に?
・「化け物」は誰?
・キツネちゃんたち
・結論・まとめ
イントロダクション
「BiSH -星が瞬く夜に-」は、WACK所属のアイドル・グループ、BiSHの楽曲。作詞は、BiSH・JxSxK・松隈ケンタ。作曲は松隈ケンタ。
2015年リリースの1stアルバム『Brand-new idol SHiT』、2016年リリースの2ndアルバム『FAKE METAL JACKET』に収録されています。
曲名にグループ名である「BiSH」が入っていることからも示唆されますが、BiSHの代表曲のひとつと言える曲です。
歌詞の内容も「楽器を持たないパンクバンド」を掲げる彼女たちらしい、風刺に満ちたもの。
いわゆるアイドルが歌う楽曲にしては、言葉づかいも少々口汚く、アイドルの常識へのカウンターを狙う、BiSHらしい楽曲とも言えます。
歌詞のなかで、僕が特に注目したいのは、サビに出てくる「化け物」というワード。この「化け物」が誰を指すのか。
結論から言ってしまうと、この曲を歌っているBiSH自身であり、アイドルを指しているんだと思っています。
アイドルも人間であり、人間なら誰もが持つ汚さを晒すために、「化け物」という印象的なワードを使ったんじゃないかなと。
そんなわけで、僕なりの「BiSH -星が瞬く夜に-」の歌詞の解釈を、これからご紹介したいと思います。
歌詞の世界観
では、実際に歌詞では、どのようなことが歌われているのか。
具体的なストーリーを伴っているわけではなく、とにかく疾走感を重視した歌詞です。
「僕」や「君」などの代名詞も使われず、ひたすらに語り手が、言葉をマシンガンのように弾き出していきます。
前述したとおり、内容には社会風刺を含んでおり、社会の人間のウソを露わにしたい、全てぶっちゃけたい、という意志が感じられます。
例えば、歌い出しとなる1番のAメロ1連目では、下記のように歌われます。
ああ嫌い oh やめにしない? ハッタリばかり
oh 幾千のここはまるでパラダイス?
1行目は、嘘とごまかしに溢れた世界に対しての発言なのでしょう。語り手はハッタリばかりの人たちと世界に、ウンザリしているのです。
2行目の「パラダイス」とは、楽園のような場所という意味ではなく、あまりにもウソが多い社会に対しての、一種の皮肉だと考えます。
その後に続く2連目でも、アグレッシヴで疾走感に溢れた言葉が続きます。1番のAメロ2連目の歌詞を、以下に引用します。
間違い 算数苦手な学生たちが oh あくせくと 電卓たたく世界
1連目以上に、ダイレクトな社会風刺と言えます。向き不向きに関係なく、画一的な人間になることを求められる社会。さらには、無能と思われる人物が、組織の上位に立つような社会を、意図してるのだと思います。
歌い出しとなる、1番Aメロの歌詞を抜粋してみると、勢いと風刺に溢れた言葉が続いています。
具体的なストーリーよりも、初期衝動をそのまま言葉に変換したかのような歌詞、とも言えるでしょう。
アイドルの命は如何に?
その後に続くBメロには、「アイドル」というワードが登場。少しだけ、具体性を増します。
1番Bメロの歌詞を、以下に引用します。
ギンギンに拡散なされたアイドルの命は如何に?
上記の「命」の読み方は、「いのち」ではなく「めい」。おそらくは、使命の意味で使われているのだと想定できます。
「ギンギンに拡散なされた」とは、SNS等での拡散によって、それなりの知名度を得たということ。炎上を利用するBiSH自体を、連想させる言葉でもあります。
上記引用部をまとめると、拡散によって注目を集めることに成功したアイドルは、その後なにを目指すべきか、という意味でしょう。
では、歌詞で問いかけられているとおり、アイドルの使命とは何かについて、考えてみます。ヒントとなるのは、その後に続くサビの歌詞。
1番のサビ1連目の歌詞を、以下に引用します。
行かなくちゃ 化け物だって 気にすんな
星が瞬く夜に keep my face あどけない
そりゃね 決定からの速さは異常だし
2行目の「keep one’s face」とは、そのままの顔、あるいは真面目な顔を保つという意味。
そこから逆算すると、1行目の「行かなくちゃ 化け物だって 気にすんな」とは、体裁とか細かいことは気にせず、とにかくステージに立て!という意味ではないでしょうか。
つまり、直前のBメロの歌詞を合わせると、注目を集めることに成功したんだから、とにかくステージでやりたいようにやっちまえ! それがアイドルの使命!ということです。
「化け物」は誰?
ここで、僕が注目している「化け物」というワードが出てきましたね。
先述のとおり、僕はこれをBiSH自身、およびアイドルを指していると仮定しました。その理由をご説明します。
まず、先ほど解釈したとおり「化け物だって 気にすんな」は、体裁なんて気にするな、という意味。ここでの「化け物」とは、人には見せられない状態をあらわす言葉だと考えています。
人に見せるべきではない、化け物のような状態。それを「化け物」という一言で、あらわしているわけです。
これは何も、ノーメイクで人前に立つというような、見た目だけの話ではなく、過激な言動やパフォーマンスも含めているのでしょう。
したがって、「化け物だって 気にすんな」とは、人にどう思われるかなんて気にするな、という意味。
その後に続くサビ2連目にも、同じく「化け物」というワードが出てきます。以下に引用します。
言わないで 化け物だって 気にすんだ
星が瞬く夜に keep my face 裏返しでも なんでもいいよ
すぐ欲しがりだね 行っちゃうの?
今度は「気にすんな」に代わって、「気にすんだ」と綴られています。
上記1行目を解釈してみましょう。「言わないで」の主語はハッキリしませんが、おそらくファンも含めた世間の声。
それを踏まえて意訳すると、いくらステージで無茶苦茶なことをやっていても、ネガティヴな言葉は気にする。だから、厳しい言葉は言わないでほしい、ということです。
つまり、ここでは「化け物」がアイドルとイコールで結ばれています。
キツネちゃんたち
「化け物」と同じく、アイドルを指すと思われる言葉が、もうひとつ出てきます。それは「キツネちゃんたち」。
2番のAメロ2連目の歌詞を、以下に引用します。
正解 嘘つきだらけ問題ありの キツネちゃんたちも
ここに来ればパラダイス!
1番のAメロでも、嘘にまみれた社会を風刺する言葉が並んでいましたが、上記2番のAメロも同様。
「キツネちゃん」とは、歌詞にもあるとおり「嘘つきだらけ問題ありの」人間を意味しているのは明白です。
では、その後に繋がる「ここに来ればパラダイス!」とは、どういう意味でしょうか。
問題ありの人間でも、アイドル現場に来れば楽しめる、とも取れます。
しかし同時に、問題ありの人間でも、アイドルになることができる。社会には馴染めなくても、アイドルになれば居場所ができる、という意味にも取れます。
僕が後者の解釈に思いあたった理由は、民間伝承ではしばしばキツネが女性に化けるため。
歌詞には確定的に書かれていませんが、「キツネちゃん」はアイドルを指していると、僕は考えています。
結論・まとめ
以上「BiSH -星が瞬く夜に-」の歌詞を、「化け物」というワードに注目しながら、読みといてきました。
冒頭にも書いたとおり、この曲における「化け物」は、語り手であるアイドル自身を示す、というのが僕の出した結論。
この曲は、新生クソアイドル(Brand-new idol SHiT)をグループ名とする、BiSHのコンセプトとも重なり、自分たちの無様な部分も晒すことを歌っています。
終盤の歌詞には、以下の一節があります。
ギンギン好奇心の目たち クソの命は如何に?
それまでは「アイドルの命」という歌詞だったのに、アイドルが「クソ」に入れ替わってしまいました。
クソを自称し、クソな部分も晒す。それがパンクの初期衝動にも近く、聴き手の感動と共感を生むのでしょう。
最初にも書きましたけど、曲名にも「BiSH」と入っていますし、彼女たち自身のアンセムのような曲なんでしょうね。
ちなみにミュージック・ビデオはクソまみれで、なんというか凄まじいです(笑)
ただ、歌詞の内容にも合っていて、テクニックよりもアティチュードだ!って初期衝動で突っ走るパンク感が、ものすごく出ている映像だと思います。
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