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miwa「ヒカリヘ」歌詞の意味考察 コミュニケーションの速度と強度


目次
イントロダクション
コミュニケーションの速度
「私」の悩み
「ホントの声」とは?
タイトルの意味
結論・まとめ

イントロダクション

 「ヒカリヘ」は、神奈川県出身のシンガーソングライター、miwaの9枚目のシングル。2012年8月15日にリリース。

 2013年リリースの3rdアルバム『Delight』にも収録されています。作詞作曲はmiwa。

 フジテレビ系ドラマ『リッチマン、プアウーマン』の主題歌となっており、オリコン最高4位。miwaさんの代表曲と言っても、差し支えないでしょう。

 歌の内容としては、語り手である「私」が、「君」への思いを綴るもの。片想いの心情を描いた、楽曲のように聞こえます。

 僕がこの曲を聴いて、面白いなと思ったのは、テクノロジーの中で生きる人間が描かれている点。

 具体的には、インターネットが発展し、コミュニケーションの速度は格段に上がったけれども、それを利用する人間の感情は変わっていませんよ、ってことを歌っているんです。

 ネット社会における孤独や、テクノロジーとの対比によって引き立つ人の暖かみも感じられて、現代的なラブソングなのではないかな、と思います。

 そこで、本論では「ヒカリへ」の歌詞を、コミュニケーションの手段に注目しながら、読みといてみます。

コミュニケーションの速度

 前述したように、この曲ではインターネットによって高速化したコミュニケーションが、モチーフとして使われています。

 例えば、歌い出しの言葉。1番のAメロの歌詞を、以下に引用します。

理想現実ワンクリック 光の速度に変わっても
地球の裏より遠い距離 アダムとイヴにはなれない

 「理想現実」という言葉は、辞書的には存在しません。しかし、文脈を考えれば、意図するところは分かります。

 かつての人類の理想が現実になり、クリックひとつで情報を送信できるようになった、ということでしょう。そもそも、1ワードとして捉えるべきではないのかもしれませんが。

 「仮想現実」と語感が似ていますし、仮想現実にならってmiwaさんがあみ出した造語だと、個人的には考えています。

 上記引用部を、順番に解釈してみましょう。前述のとおり、1行目はインターネット等の発達により、コミュニケーション速度が格段に上がったことをあらわしています。

 2行目の「地球の裏より遠い距離」は、地球の裏の人とも瞬時にコミュニケーションをとれるようになったけれども、それによって人間関係の距離が、縮まるわけではないということ。

 「アダムとイヴにはなれない」とは、特に男女関係において、コミュニケーション速度が上がったからといって、親しくなれるわけでない、という意味でしょう。

 「地球の裏より遠い距離」は、1行目の内容を受けて、遠くの人とも簡単にコミュニケーションがとれる事実を強調。

 同時にその後に続く「アダムとイヴ」へも繋がり、コミュニケーション・ツールが発達しても、必ずしも親しい関係にはなれない。近くにいても、精神的には地球に裏側にいるように感じることもある、という意味だと考えます。

 まとめると、通信技術の発達によって、地球の裏側の人とも容易にコミュニケーションがとれるようになったけど、だからといって必ずしも他人との関係が近くなるわけではない、ということですね。

 ハッキリとは記述されませんが、語り手は人間関係に悩んでいるのでは、と示唆する内容です。

「私」の悩み

 じゃあ、語り手はどんな悩みを抱えているのか。その内容が、Bメロ以降で明かされていきます。

 1番のBメロの歌詞を、以下に引用します。

悲しみの生まれた場所たどって
その傷やさしく触れて癒せたなら

 こちらの引用部も抽象的で、具体的なことは分かりません。しかし、誰かの悲しみを癒したい、という感情は明らかにされています。

 その後に続くサビの歌詞で、癒したい対象が誰であるのか、明らかになります。以下に引用します。

溢れる想い 愛は君を照らす光になれる
切ないほどに
たとえ描く未来 そこに私がいないとしても
いまはそっと抱きしめてあげる

 ここまでは代名詞が出てきていませんでしたが、上記のサビでは「私」と「君」が登場。語り手である「私」は、「君」に好意を寄せていることが分かります。

 具体的には書かれませんが、可能性の一つとしては「私」は「君」に、片想いをしているのでしょう。そう考えると、Aメロの歌詞の内容も、しっくりきます。

 ここまでの歌詞の内容をまとめると、「私」は「君」に片想いをしている。メールやSNS等のツールによって、コミュニケーションを取ることはできるけれども、2人の距離は思うように縮まらない、ということです。

「ホントの声」とは?

 1番のAメロでは、通信技術の発達が、必ずしも人との距離を縮めることにはならない、と主張されていました。

 それに対して2番のAメロでは、ツールを用いたコミュニケーションの問題点が指摘されています。以下に引用します。

遠慮配慮言葉の最後 感情記号化されても
心の奥まで伝わらない ホントの声を聞かせて

 1行目は、メールやLINE等の文末を、絵文字でしめる事をあらわしているのでしょう。

 そして2行目には、そのように絵文字で感情を記号化しても、本当の気持ちは伝わらない、と続いています。

 前述のとおり、1番のAメロで主張されたのは、通信ツールの発達が、必ずしも人との距離を縮めないということ。

 2番のAメロでは、さらに一歩踏み込んで、テクノロジーを介したコミュニケーションによって、感情が伝わりにくくなってしまう、と主張されています。

 言い換えれば、技術の進歩によって、コミュニケーションの速度は上がったけれど、強度は損なわれてしまったということです。

 語り手である「私」は、システム化したコミュニケーションが充満する現代社会において、本当の感情をおもてに出し、人のぬくもりを感じることを、求めているのでしょう。

タイトルの意味

 全てカタカナで表記された、タイトルの「ヒカリヘ」。これが何を意味するのか、考えてみましょう。

 歌詞の1行目に「光の速度に変わっても」と出てきました。つまり、ひとつには高速化したコミュニケーションをあらわしているのだと思います。

 そして、サビの歌詞にも「愛は君を照らす光になれる」と出てきます。こちらは、人を癒したり、助けたりする、目に見えない力を「光」という言葉であらわしているようです。

 いずれもカタカナではなく、漢字で「光」と表記されています。では、なぜタイトルではカタカナ表記となっているのか。

 僕の考えでは、記号化した言葉が多い現代において、本当の心を大切にしたい、という思いをあらわすため。「ヒカリヘ」とカタカナにすることで、絵文字のように言葉を記号化しているのだと思います。

 しかし、この曲は「光」が記号化して価値がなくなってしまった、と主張しているのではありません。記号化した社会においても、人を思う力を信じたい、と訴えているのです。

 感情を記号化し、ワンクリックで送信できる世界において、本当の声を届ける大切さを説いた曲だと、僕は考えます。

結論・まとめ

 では、結論に入りましょう。

 通信技術の発達で、コミュニケーションが高速化した現代。それは便利であるのと同時に、コミュニケーションおよび人間関係の濃度が、希薄になる危険性もはらんでいます。

 「ヒカリヘ」は、コミュニケーションが高度にシステム化していく現代において、感情を素直に伝える大切さを歌っている、というのが僕の出した結論。

 高度に発達したテクノロジーのなかで生きる、人間の孤独もあらわていて、現代社会の問題点を切り取った、優れたラブソングでもあると思います。

 それと、サウンドの面でも、電子音と生楽器のコントラストが、歌詞の内容とリンクしているところにも注目してください。

 いかにも打ち込みっぽいバスドラの四つ打ちが入っているのに、ダンス・ミュージックの要素は皆無。シンセサイザーのソフトなサウンドも多用されているのですが、むしろアコースティック・ギターと歌が、対比的に際立っています。

 電子音を用いることで、歌と生楽器の暖かみが増しているんです。

 最新のテクノロジーを用いてサウンドを構築しつつ、人の声とメロディーの良さを中心に据えていて、歌詞の世界観をそのまま音にしたのかなというバランス。

 いい意味で現代的であるし、名曲だなぁと思う1曲です。

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miwa「結 -ゆい-」歌詞の意味考察 「僕たち」の共犯関係


目次
イントロダクション
語りの枠組み
「僕」と「あなた」の関係性
なぜ「僕たち」を使ったか?
タイトルの意味
結論・まとめ

イントロダクション

 「結 -ゆい-」は、2016年10月5日にリリースされた、miwaのメジャー通算21枚目のシングル。2017年リリースの5thアルバム『SPLASH☆WORLD』にも、収録されています。作詞作曲はmiwa。

 この曲はNHK『みんなのうた』に採用されていて、僕が初めて耳にしたのも、この番組でした。他のことをしながら、テレビ画面を見ずに聴いていて、「声もメロディーも、やたらmiwaに似てるなぁ」と思っていたら、miwa本人の曲だったという…。

 初めて聴いたときから、いい曲だなと思っていました。その理由は、いかにもNHKらしく教育的なのに、奥にはプロテスト・ソングに通ずる、メッセージが含まれているから。

 「教育的」なんて書くと、小難しい感じがしますけど、リスナーに人生を説いた曲だということです。別にNHKのことも、miwaさんのことも、ディスってるわけじゃありませんよ。

 「結 -ゆい-」というタイトルのとおり、曲のテーマを端的に言うと、仲間との絆。しかし、ただポジティヴな言葉を重ねるだけでなく、世界の厳しさを説くところもあり、理想論と現実感のバランスが絶妙な楽曲です。

 その厳しさを説く部分に、前述のプロテスト・ソングの香りが漂うんですよね。ただ「仲間との絆を胸に頑張ろう!」と連呼するだけではなくて、孤独や大人とのコミュニーケーションといった、現代的な悩みも楽曲に落とし込まれています。

 基本的には若者に向けられた曲なのですが、大人との対立を煽るわけでも、世間の常識にツバを吐くわけでもなく、おだやかに励ますような歌詞です。少し年上の先輩が、後輩を励ますような感じ、とでも言うんでしょうか。

 また語りの内容も、具体的なストーリーを語るのではなく、抽象的にメッセージが記述されていきます。語り手は出てくるのですが、代名詞は「私」や「僕」ではなく、つねに複数形の「僕たち」。

 この代名詞が複数形になっていることに注目し、歌詞の意味を考察してみたいと思います。

語りの枠組み

 最初に語りの枠組みを確認しましょう。語り手が誰で、ほかに登場人物は出てくるのか。

 前述したとおり、歌詞に出てくる一人称代名詞は「僕たち」のみ。しかし、語り手が複数いるわけではなく、あくまで語っているのは「僕」ひとりだと想定されます。では、なぜわざわざ複数形の「僕たち」を使ったのか、その理由を考えてみます。

 まずは、ほかの登場人物を確認しましょう。「僕たち」のほかに使われている代名詞を確認すると、「あなた」が登場。語り手である「僕」が、「あなた」に向かって語りかけている構造だとわかります。

「僕」と「あなた」の関係性

 次に、語り手である「僕」と、励まされる「あなた」がどんな関係であるのか検討します。

 歌詞は、具体的な人物描写やストーリーが乏しく、どちらかというと、やや抽象的なもの。そんななかで、歌い出しとなる1番のAメロに、唯一とも言える「あなた」のスペックをあらわす情報があります。

 1番Aメロの歌詞を、以下に引用します。

「大人のために生きてるわけじゃない」と
うつむいた瞳には映らないけれど
見上げればこんなに青空は広いのに

 1行目の「大人のために生きてるわけじゃない」という一節。わざわざカギカッコで区別しているのは、語り手の発言ではなく、「あなた」の発言を引用しているという意味でしょう。

 「大人のために生きてるわけじゃない」ということは、発言者の「あなた」は大人ではない、つまり10代の若者を想定していることが分かります。

 また発言内容と、2行目に続く「うつむいた瞳」という描写からは、大人との対立も示唆されます。3行目には、語り手の「僕」が「あなた」を慰めたいという感情が、述べられているのでしょう。

 上記引用部で得られた情報をまとめると、「あなた」は若者であり、少なからず大人と緊張関係にある。そして語り手である「僕」は、そんな「あなた」を慰めている、という状況です。

 では「あなた」と「僕」は、どんな関係性にあるのか。「あなた」と同じ立場に立っていることから、「僕」と同様に大人ではなく若者であると想定できますが、上記引用部からは確定的な情報は得られません。

 しかしサビに入ると、より2人の関係を浮かびあがらせる言葉が並びます。1番のサビの歌詞を、以下に引用します。

信じること
あなたの中に 眠ってる力に気づいて
あきらめないで
無駄なことなんて なにひとつないって思い出して
僕たちはなにより強い絆で結ばれている

 4行目までは「あなた」を励ます言葉が続いています。そして5行目には、先ほど指摘した「僕たち」という代名詞が登場。

 では、この「僕たち」は誰を指しているのでしょうか。普通に考えれば「語り手」である「僕」と「あなた」を指しているのでしょう。

 さらに、その後に続く「なにより強い絆で結ばれている」という一節。「僕たち」と一括りにできる点と、強い絆で結ばれているという点から、2人は対等な立場であることが窺えます。

 つまり、「僕」は「あなた」と同世代の友人であると考えるのが自然でしょう。

なぜ「僕たち」を使ったか?

 では、なぜわざわざ「僕たち」と複数形を用いたのか、考えてみます。

 前述のとおり「僕」と「あなた」が、対等であると示す効果もあるでしょう。しかし、複数形の「僕たち」を使わなくとも、2人が対等であると示すことは可能です。

 この曲で「僕たち」を用いたのは、「僕」と「あなた」をイコールで結び、価値観の共有を強調するため。さらには、歌詞のなかの「あなた」のみならず、リスナーをも巻き込む機能を持っている、というのが僕の立てた仮説です。

 「僕たち」という表現に、「僕」と「あなた」が含まれるのは、先ほど考察したとおり。しかし、この言葉の範囲はそれだけにとどまりません。

 複数形であるために、「僕」と「あなた」以外にも、同じ価値観を持つ、多くの人をとりこむことが可能。例えば、この曲を聴いているリスナーさえも、当事者として曲の世界にひきこむことが可能となります。

 これは、もしも複数形の「僕たち」を使わずに、単数形の「僕」が「あなた」に問いかける構造であったならば、不可能だったこと。

 「僕」が「あなた」へダイレクトに問いかける方が、メッセージ性は際立つ歌詞になっていたかもしれません。しかし、あくまでメッセージが前景化し、リスナーを楽曲の世界に参加させることはできないでしょう。

 「僕」と「あなた」以外の人をも含むことができるのが「僕たち」という複数形。つまり、この曲のメッセージに共感する人なら、誰でも「僕たち」の一部になれるということです。

 言い換えれば、曲の語り手は「あなた」に語りかけるのと並んで、リスナーにも語りかける構造が成り立っています。

 「僕たち」という言葉には、リスナーと共犯関係を結び、楽曲の世界にひきこむ効果があるということです。もちろん複数形を用いずとも、曲のなかの「あなた」に自分を照らし合わせて、共感する人もいるでしょう。

 この曲では、わざわざそのような変換作業をしなくとも、おのずから聴き手を曲のなかに引き込み、ますます共感性が高まっているということです。

タイトルの意味

 では、「僕たち」がリスナーをも巻き込む言葉だと確認したうえで、この曲がなにを訴えているのか、検討してみましょう。

 「結 -ゆい-」というタイトルにも集約されていますが、人と人との繋がりをテーマにした曲であるのは明らかです。

 歌詞には「結」という言葉そのものは出てきませんが、その代わりに「絆」という言葉が何回か出てきます。2番のサビの歌詞を、以下に引用します。

遠ざかる雲
手を伸ばしても 届かないものもあるんだから
いちばん手に
入れたいものって 簡単じゃないでもあきらめない
僕たちはなにより強い絆で結ばれている

 4行目までは、手が届きそうにない夢でも諦めずに追いかけよう、というメッセージが、やや抽象的なかたちで記述されています。

 しかし、最後の5行目は一変して「僕たち」の絆についての記述。一見すると、前後の繋がりが無いように思われますが、逆にいくつもの解釈が可能なところでもあります。

 1番のサビでは、「僕」が「あなた」を励ます言葉が並んでいました。つまり、発言者と対象者がハッキリしていたということ。

 対して上記2番のサビでは、主語が曖昧なままになっています。特に4行目の「簡単じゃないでもあきらめない」。

 その前までは、1番と同じく「僕」が「あなた」にかけた言葉だと解釈できますが、4行目の「でもあきらめない」は、「僕」自身の決意のように響きます。

 もし「あなた」に対してかける言葉なら、「あきらめないで」とした方が自然でしょう。しかし「あきらめない」と言いきることで、主語と目的語が曖昧になっています。

 発言者と対象者が、一体となっているとも言えるでしょう。「結」というタイトルからも示唆させるように、人間同士の繋がり、とくに仲間がいるから頑張れる、という感情を描写しているということです。

 そのため、あえて「僕」と「あなた」の境界を曖昧にし、絆が前景化するようにしたのではないかと思います。

結論・まとめ

 ここまでの考察をまとめましょう。「結 -ゆい-」というタイトルを持つこの曲は、その曲名が示唆するとおり、仲間との繋がりがテーマとなっています。

 そのため、語り手が用いるのは単数形ではなく、複数形の「僕たち」。「僕」と「あなた」の境界をあえて曖昧にし、さらにはリスナーをも楽曲の世界に巻きこみ、人との繋がりの大切さを訴えていきます。

 メッセージをただ記述するだけでなく、語りの構造がメッセージの一部となっているのが、この曲の特異な点と言えるでしょう。

 直接的ではないけど、若者の立場から大人との対立を描いた曲でもあります。THE BLUE HEARTSや尾崎豊をカバーしたこともあるmiwa。

 あまり表には出さないけれど、思った以上に物申したいことがある人なのかなと想像します。

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miwa「ミラクル」歌詞考察 ×××××に入る言葉と意味は?


目次
イントロダクション
設定確認
「私」と「あなた」の関係性
×××××部分に入る言葉
「ミラクル」の意味
結論・まとめ

イントロダクション

 「ミラクル」は、2013年4月24日にリリースされた、miwaの11枚目のシングル。2013年5月22日にリリースされた3rdアルバム『Delight』にも、収録されています。

 作詞はmiwa。作曲はmiwaとNaoki-T。

 タイトルの「ミラクル」とは、奇跡を意味する英語の「miracle」。

 漢字の「奇跡」ではなくて、カタカナの「ミラクル」。その表記が示唆するように、歌詞もメロディーも、軽やかな疾走感を持った楽曲です。

 「ミラクル」と言うからには、歌詞には奇跡的な出来事が扱われるはず。結論から言ってしまうと、キラキラした恋心を歌った曲です。

 結論だけを聞くと、なんだかあっけないと感じられるかもしれません。でも、実際には「ミラクル」と呼ぶにふさわしい、キラキラした感情が詰め込まれた歌詞になっています。

 また、歌詞には「×××××」と伏せられた部分があります。もちろん、ここには「F××k」のような汚い言葉が入るわけではなく、作者の意図によって伏せられています。

 では、なぜこの部分を伏せ字にしたのか。そもそも、ここに入る言葉はなにか。

 タイトルの「ミラクル」とも重なってきますので、上記の伏せ字の意味と、ミラクルが具体的になにを指すのか意識しながら、この曲の歌詞を読み解いてみたいと思います。

設定確認

 先ほど、この曲は「キラキラした恋心を歌った曲」だと書きました。それだけだと、あまりにも情報が少なすぎるので、まずは歌詞の設定を確認していきましょう。

 まず、登場人物は語り手である「私」と、「あなた」の2人。設定された季節は夏です。

 「私」が「あなた」に抱く恋愛感情が、夏らしいイメージを散りばめながら、疾走感を伴って描写されます。

 語りの時制は、過去形でも現在形でもなく、常に現在進行形と言いたくなるぐらい、「私」の溢れ出る感情が綴られていきます。
 

「私」と「あなた」の関係性

 歌詞の大枠が確認できたところで、実際の歌詞を確認していきましょう。まずはAメロの歌詞を、以下に引用します。

日射しが照りつける空の下 笑顔ひとつこぼれる
夏の恋に飛び込んで
ユラユラ揺れる心の波間に 流れ着いた あなたがいた
熱くなるこの気持ち
手のひらから伝わる熱 私だけじゃないよね

 上記引用部では「私」が「あなた」に恋する過程が語られています。注目すべきは、具体的なエピソードではなく、あくまで「私」の心情にフォーカスしているところ。

 1行目の「笑顔ひとつこぼれる」は、主語が書かれてはいませんが、「私」のことでしょう。歌い出しは、「私」の心がときめく瞬間から始まっています。

 2行目の「夏の恋」で、季節設定が夏であることを明らかにし、さらに「心の波間」と、夏の海を連想させる表現を用いています。

 5行目の「手のひらから伝わる熱」は、どういう意味でしょうか。「私」と「あなた」が手を繋いでいるとも取れますが、前後の文脈を考えると、おそらく違います。

 この表現は「私」のテンションが上がり、あるいは緊張のため、手のひらがじんわり熱くなっているということでしょう。その後に続く「私だけじゃないよね」は、「あなた」も私と同じように、恋のテンションが上がっていてほしい、ということ。

 上記の引用部からは、「私」の恋心が盛り上がっていること、「私」と「あなた」はまだ恋愛関係ではない、ということが分かります。

×××××部分に入る言葉

 Aメロに続くサビの歌詞を、以下に引用します。

キラキラあなたがまぶしくて いつから恋が始まったの
私 裸足のまま 駆け抜けてゆく
まばたきしたら過ぎる瞬間 忘れないでね
いちご味のかき氷 溶ける頃に切ない想い
あなたとなら ×××××

 上記引用部では、「私」の心情がより詳細に語られています。まず1行目では、「あなた」のことをいつから好きになったのかを回想。Aメロの内容を、振り返っているとも言えます。

 2行目の「裸足のまま」というのは、夏だから海で裸足になる事と、感情の赴くままに行動することを、かけているのでしょう。

 4行目は何を意味するのでしょうか。「私」は「あなた」と一緒に、かき氷を食べているのでしょう。いや、一緒にはいますが、食べているのは「私」だけかもしれません。

 「溶ける頃に切ない想い」というのは、「あなた」に気持ちを伝えようと思うものの言い出せず、時間が経過していく様子を、表しているのだと思います。

 つまり、かき氷を食べながら、想いを伝えるタイミングをうかがっているが、切り出すことができず、時間だけが過ぎている、ということです。

 そして5行目の「あなたとなら」に続く、「×××××」。この部分に入る言葉と、その意味を検討します。

 歌詞を注意して聞いてみると、当該部分は「I’ll work a miracle」と歌っているようです。「work a miracle」は「奇跡を起こす」という意味。

 「I’ll work a miracle」は、「私は奇跡を起こす」と、自分の意思を表明しているということです。

「ミラクル」の意味

 タイトルにもなっている「miracle」(ミラクル)という言葉が、ここで出てきました。では、曲の中で「ミラクル」とは、具体的に何を意味するのでしょうか。

 「×××××」部分に「I’ll work a miracle」を代入すると、先ほどの引用部5行目は「あなたとなら I’ll work a miracle」となります。

 意訳すると、「あなたと一緒なら奇跡を起こせる」ということでしょう。ここまでの歌詞の内容を考慮すると、2人の恋の成就を意味するのだと想定できます。

 「私」にとって「あなた」が大きな存在であり、心が抑えきれないほど高鳴っていることを表すため、「ミラクル」という言葉を使ったのではないでしょうか。

 2番のAメロの歌詞でも、「私」の胸の高鳴りが、引き続き綴られています。以下に引用します。

閉じこもっていた心 解き放てば見えてくる世界
こんなにもきらめいて モヤモヤしてたって始まらない
思い出にはまだ早いよ 迷わずに飛び出して
どこへだって行けるはずでしょ 太陽沈まないで

 引用部1行目と2行目では、恋をしたことで、心の持ちようまで変わったことが記述されています。

 3行目の「思い出にはまだ早い」とは、「あなた」との恋を諦めてしまうのは、まだ早いという意味でしょう。「思い出」という言葉で、「あなた」との出来事が過去になる事を表しています。

 4行目は「私」が自分自身を、奮い立たせている言葉でしょう。「太陽沈まないで」というのは、いろいろと解釈可能な表現です。

 文字通りの意味は、太陽が沈まないで、そのまま昼間であってほしいということ。ただ、太陽を夏の象徴として、夏が終わらないでほしいとも取れますし、「あなた」との関係が切れないでほしいとも解釈できます。

 いずれにしても上記引用部は、「私」の恋に対するテンションが、いきいきと閉じこめられています。

 さらに2番のサビでも、「私」の高鳴る感情が綴られていきます。以下に引用します。

今すぐあなたに会いたくて いつでも恋は少し苦しい
短い夏がほら 加速させるの
二度と戻れないこの瞬間 つかまえててね
夜空に打上げ花火 消える前にお願い早く
あなたとなら ×××××

 引用部1行目に「恋は少し苦しい」という一節が出てきました。想いが強くなればなるほど、失ったときのダメージも大きくなる。楽しいだけではない恋の本質が、端的に表現されています。

 叶わなかった時のショックも大きいが、成就した時の喜びも大きい。それほどまでに膨らんでしまった恋心を表すため、「ミラクル」という、いささか大げさとも取れる言葉を使ったのだと思います。

 上記引用部では、1番のかき氷に代わり、「打上げ花火」が出てきます。「かき氷」は時間の経過を表していましたが、上記の「打上げ花火」は、感情の高鳴りと刹那感を表しているのでしょう。

結論・まとめ

 以上、「ミラクル」の歌詞を、曲の中で「ミラクル」は何を意味するのか、という視点に基づいて読み解いてきました。

 この曲では、恋がもたらす感情の大きさを表すため、恋の成就を「ミラクル」という言葉に置き換えています。

 該当部分の歌詞が「×××××」と伏せ字になっているのは、言葉に出せないほどの感情を、強調するためではないかと思います。

 「私」の感情の高鳴りに、焦点が当てられたこの曲。そのため、恋が成就したかどうかは、最後まで明らかにされません。

 「かき氷」や「裸足」など、夏を連想させる単語を散りばめ、夏の開放感と暑さを、心の高鳴りと連動させているところも秀逸。

 歌詞にも出てくるとおり「キラキラ」とした感情が伝わる楽曲です。

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